事件の些少さが良い
イギリスのバースを舞台に、イタリア系のルンギ一家が活躍するミステリ。家族全員が探偵という設定はすごいと思うが、なぜ、わざわざイタリア系にしたのか。たぶん、イギリス人では嘘っぽくなってしまうからだろう。家族の絆を大切にして不自然でないのは、もはやイタリア人だけなのだ。 ともあれ、家族をテーマに据えることで、本書が楽しくて安心出来る読み物に仕上がっているのは確か。台所の洗剤の置き場所に関する事件などの些細な事件に、些少な家族の問題がからんできて、生き生きとした人間関係が描き出されている。 ミステリとしてはもうひとつだが、コージーミステリ好きにはたまらない一冊だろう。 アルバート・サムスンのファンには、いささかの違和感が感じられるかも知れない。
家族小説?
タイトルにひかれて読みました。ミステリーよりも家族に重点が置かれているように思いました。場面転換が多くて少し読みにくかったという印象です。
英国のイタリア系大家族喜劇小説
ユーモアミステリーとして、クレイグ・ライスの『スィート・ホーム殺人事件』やジル・チャーチルの主婦探偵ジェーンシリーズには及ばないかもしれないが、孫娘のキャラが一番面白く、ミステリー色の弱い感じがする本書の救いだった。
一服の清涼剤的ミステリ
マイクル・Z・リューインの『探偵家族』です。本書は97年に早川書房のポケミスとして出版されたものですが、このたび文庫化されたので手に取りました。原題は"Family Business"で、同名の映画のほうは泥棒一家の話だったが、こちらは私立探偵を家業としている。リューインといえば『沈黙のセールスマン』に代表されるアルバート・サムスンのシリーズが有名だが、このイギリスのバースに居を構えるルンギ一家の物語もなかなかのものだ。とかくエスカレートする連続殺人など派手なミステリが主流の中にあって、一服の清涼剤的な佳作といってよいでしょう。親子三代で私立探偵を営むルンギ家をひとりの主婦が訪ねてくる。最近夫が何かに気を取られているようなので、何が原因か調べて欲しいというものだ。女性問題かとも思われたが、とりあえず次男アンジェロがその夫を尾行することになる。一方で若い女性から自分のことをバーで尋ねまわっている不審な男についての調査も頼まれる。一見地味な二つの事件が、やがて過去の殺人事件へとつながっていく・・・。この探偵事務所の経営者で一家の長である親爺さんを筆頭に、個性的な面々がそれぞれに活躍するが、なんと言っても、全編をながれるとぼけた味、そこはかとないおかしみが本書の特長でしょう。とんでもないどんでん返しなど用意していないが、変哲のない調査から思わぬ殺人事件の真相が明らかになる展開も作者の確かな芸を感じさせる。そうそう、それに『おやじの細腕まくり』なんてエッセイまでものにする翻訳の田口俊樹さんのタッチも本書にぴったりだという事を忘れてはならない。
早川書房
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